ある主婦が運転していた車とバイクの追突事故が起きた状況は次の通りです。

  • 住宅街の4m道路に面した自宅車庫にバック駐車をしていた。
  • 時間は冬の午後6時、街路灯から離れていたので、車庫の付近は薄暗かった。
  • 車を斜めに傾けてから車庫に近づいた時、後から来たバイクが車の側面に追突した。

車庫の場所は、道路の進行方向に対して左側にあり、車は一旦右側に約45度に傾け、左側を内側にしてバック駐車を開始しました。車を傾けた時には、4m道路を塞ぐ形になり、バイクが横を通り過ぎる余裕はありませんでした。

このような、道路に面した車庫に、バック駐車中の車とバイクの追突事故と、同じようなケースの過失割合を説明した記事は、中々見当たりませんでした。

そこで、素人ではありますが、30代主婦のドライバーの一人として、どのような過失割合になるか推理してみようと思いました。

私も道路に面した車庫(駐車場)に、毎日バック駐車しているので、万が一の時のために、どのような過失割合になりうるのか、推測することだけでも、無駄ではないと考えました。
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車とバイクの追突事故に近い典型事例はどれか?

判例タイムズ社が出版している「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」 という書籍が、過失割合の事例を詳しく解説しているそうですが、私はその本を持っていないし、その本に今回と同じような事例が載っているとは限りません。

推理するしかないのですが、駐車中の車とバイクの公道での追突事故に近い典型事例を、公にされている情報の中から探してみました。

1、直進バイクと左折車が追突した典型例

車とバイクの状況バイクの過失(%)車の過失(%)
前の左折車に後ろの直進バイクが追突4060
前の直進バイクに後の左折車が追突2080
直進バイクを追い越した左折車が追突1090

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道路の左にある車庫にバック駐車する状況は、一種の左折ではないかと考えました。

そこで、左折する車と直進するバイクの過失割合を調べると、3通りの状況があって、今回の事例に近いのは、「前の左折車に後ろの直進バイクが追突」の典型例が近く、バイクが40%、車が60%の過失割合です。

車の方が先に左折行動をしていたのだから、バイクにはその行動を認識する余裕があったという理由です。

それでも、車の方が過失割合が大きいのは以下の理由が考えられます。

  1. 「優者危険負担の原則」による。
  2. 車側に巻き込みを予測する注意義務があった。

「優者危険負担の原則」とは、事故の場合に弱い立場のものより、強い立場のものが責任を多く負担するという、自動車保険の基本的な考え方です。歩行者>自転車>バイク>自動車>大型自動車の順に過失割合が大きくなっていきます。

相手が自転車の場合には、車の過失割合は更に大きくなります。参考までに挙げておきましょう。バイクと自転車を同列に考えるのは危険なことが分かります。自転車恐るべしです。

車と自転車の状況自転車の過失(%)車の過失(%)
前の左折車に後ろの直進自転車が追突1090
前の直進自転車に後の左折車が追突0100
直進自転車を追い越した左折車が追突0100

左折車への追突ではありますが、この典型例を参考にすれば、本題のバック駐車への追突事故の過失割合はバイク40%、車60%の推理です。

2、路外から進入した車に直進バイクが追突した典型例

車とバイクの状況バイクの過失(%)車の過失(%)
路外からの左折車に直進バイクが追突1090
路外からの右折車に直進バイクが追突1090

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この典型事例は、道路の外から車が侵入して来て、直進するバイクが追突した事故です。

優先する道路を直進するバイクの行く手を邪魔した形になるので、車の過失割合が90%と高くなっています。

本題のバック駐車の場合も、直進するバイクの行く手を邪魔した形という点では共通しています。ただし、本題の場合には路外からの道路への進入ではなく、道路から路外(車庫へ)退場する途中の事故です。そして、車の方が先にその地点(車庫前)にいたのですから、ここまでの過失の高さにはならないのではないかと考えます。

したがって、この典型事例は本題の事故の過失割合の参考には、そのままでは適さないと思いました。

直進するバイクには前方不注意、速度違反などの修正要素が加点される可能性があるのではないかと考えます。

  • 前方不注意+10%
  • 時速15㎞以上の速度超過+10%(30㎞以上では+20%)
  • ライトの無灯火+10%

バイク側に+10%以上の加点がされるのが合理的な印象を受けます。少なくともバイク側には合計20%以上の過失があると思いたくなります。この典型例を参考にすれば、本題のバック駐車の事故はバイク20%、車80%の過失割合と推理します。

3、駐停車中の車にバイクが追突した典型例

車とバイクの状況バイクの過失(%)車の過失(%)
駐停車中の車に直進バイクが追突1000

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完全に停まっている車は避けようがありませんから、追突したバイクに100%の過失があるのは当然かもしれません。しかし、この状況が成立するには条件があります。

  • 駐停車禁止の場所でないこと(過失の場合は+10%)
  • ハザードランプを点灯していること(過失の場合は+10~20%)
  • 駐停車方法が適切であること(過失の場合は+10~20%)
  • 視認できる状況下で行うこと(過失の場合は+20%)

本題のバック駐車の途中の追突事故は、バイク側から見ると、一時的な駐停車と言えないこともないような気がします。薄暗い道路の真ん中に車を横たえていた状況ではあるわけですから。

そう仮定すると、駐停車の場所や方法は適切でなく、暗くて視認しずらい状況で行っていたという主張も成り立つ可能性はあります。

従って、本題のように夜間の薄暗い場所で、バック駐車の途中の道路を塞いでいる状況は、過失0%になる可能性は低いと考えられます。

後方の未確認(過失なら+10%)、視認されにくい状況下で行った(過失なら+20%)、ハザードランプの無点灯(過失なら+10~+20%)などの加点が有れば、40%以上が加点される可能性はあります。

勿論、先程と同様に、バイク側の前方不注意、速度超過などの過失の可能性は残ります。

この典型例を参考にすれば、本題の事故はバイク60%、車40%の過失割合の推理です。

4、進路変更した車に直進バイクが追突した典型例

車とバイクの状況バイクの過失(%)車の過失(&)
進路変更した車に直進バイクが追突2080

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後続のバイクを、進路変更した車が邪魔をした形になります。バイクからすると、突然目の前に車が現れた訳で、バイク側に不可抗力的な優位を感じます。

しかし、本題のバック駐車の場合には、バイク側には十分車を確認出来得る位置にあるわけで、バイク側の過失はもっと加算されることが妥当です。

前方不注意(過失の場合は+10%)は問われる可能性が高いので、この典型例を参考にすると、本題のバック駐車の事故の過失割合はバイク30%、車70%の推理です。

5、転回中の車に直進バイクが追突した典型例

車とバイクの状況バイクの過失(%)車の過失(%)
転回中の車に直進バイクが追突1090

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この事例も車がバイクの進路を邪魔した形になるので、車の過失割合が高くなります。

しかし、本題のバック駐車では車の移動距離は転回よりも範囲が狭く、移動速度も遅いと考えられ、少なくともバイクの前方不注意の過失+10%は加算されるのが適当と思われます。

従って、この典型例を参考にした場合の本題のバック駐車の過失割合は、バイク20%、車80%と推理されます。

私の推理の結論

本題のバック駐車の車にバイクが追突した場合の過失割合の最終的な推理は、各典型事例を参考に出した推理の過失割合を、単純に平均化することで求めました。

推理の参考にした事例バイクの過失(%)推理車の過失(%)推理
直進バイクと左折車が追突した典型例4060
路外から進入した車に直進バイクが追突した典型例2080
駐停車中の車にバイクが追突した典型例6040
進路変更した車に直進バイクが追突した典型例3070
転回中の車に直進バイクが追突した典型例2080
推理した過失割合の平均3466

私が推理した、バック駐車中の車に追突したバイクとの過失割合の結論は、バイク34%、車66%となりました。

数値的には妥当なような気がしますが、いかがでしょうか?