何分も待ってやっと上がった踏切の遮断機。もたもたしてると、また反対側から電車が来そうなので早く渡りたい。

前の車に続くようにして踏切の中に入っていく。もう少しで渡り切れるところで、前の車のストップランプが点灯した。

自分の車はまだ半分が踏切の中に残っている。前の車は止まったまま動かない。どうやらすぐ先の信号が赤で渋滞しているようだ。こんなところで止まっているのは良い気分ではない。

すると警報機のチンチンチンという音と共に、遮断機がフロントガラスの前に降りて来てしまった。前の車は依然として進もうとしない。頭の中が真っ白になってしまった。どうしたら良いのか?

踏切

踏切内で立ち往生した時の対処法

遮断機が下りてしまったら

トラックやバスなどの大型車でなければ、降りてしまった遮断機でも、押し進めば折れることなく持ち上がり、フロントガラスからルーフを滑るようにして、 車は遮断機を擦り抜けることが出来るようになっています。


<出典動画:『踏切脱出訓練』YouTube>

大型車で持ち上がり切れずにへし折ったとしても、電車と衝突しないために、遮断機を押して踏切を脱出することを第一優先に考えます。

遮断機の前に車が止まっていて進めない場合

  • クラクションを鳴らし、窓から手で合図を送って、前の車に非常事態をしたせ、少しでも前に進んでもらうようにします。
  • 前の車が進めない場合は、左側の歩道や右側の対向車線にスペースがあれば、そちらに向かって遮断機を押し進めて脱出します。歩道や対向車線を、車を真横にして塞いでしまっても構わないので、とにかく踏切の外へ車を逃がします。BlogPaint
  • どこにも逃げるスペースがない場合は、ギアシフトをL(MTなら1速)に入れ、前の車をバンパーで押して強引に前へ進みます。前の車はギアシフトをDに入れてブレーキペダルを踏んでいる状態なので、押せば動きます。前の車数台に傷をつけても、電車と衝突することに比べれば遥かに損害は少なくて済みます。

エンジンが動かなくなってしまったら

エンジンが止まってしまった場合、ギアシフトを確認して(AT車はPかN、MT車はN)エンジンがかかるか試します。いつまでも試すのでなく短い時間で見極めます。(最近のMT車は、クラッチを踏んで切った状態でないとエンジンがかからないようになっているので、ギアを入れた状態でセルモーターの力だけで車を動かす従来のやり方は出来なくなっています)

エンジンがかからない場合は、ギアシフトをNにしてから車を降り、踏切に設置されている非常ボタンを押します。非常ボタンがない場合は、車に備え付けの発煙筒を準備します。

発煙筒

<出典画像:『発煙筒』http://blog-imgs-67.fc2.com/k/i/v/kivarn/20140904-1.jpg>
警報機が鳴るまでの間、ギアシフトをN(ニュートラル)にした状態の車を押して脱出することを試みます。付近に人が居れば協力を要請します。車を押す方法ですが、ボディを後ろから押すよりも、前のタイヤを転がした方が少ない力で車を動かせます。

<出典動画:『平地で車を人力で動かす簡単な方法(なんのことはない)』YouTube>

警報機が鳴っても脱出できない時は、車から離れて安全な場所に退避します。非常ボタンがない場合には着火した発煙筒を振って、近づいてくる電車に知らせます。

タイヤが脱輪して動けなくなったら

タイヤが脱輪して動けなくなった場合は、直ぐに自力での脱出は断念して、乗員全員は車を降り、非常ボタンを押して安全な場所に退避します。

タイヤが脱輪して挟まってしまうと簡単には抜け出せません。脱出よりも、車を乗り捨て、危険を早く知らせることに頭を切り替えます。

<出典動画:『高崎線E231系 前面展望 籠原~深谷駅間で遭遇したハプニング』YouTube>
最悪の場合、車が電車と衝突しても、非常ベルで知らせてあれば、電車のブレーキもかかっているので、車側の破損に比べて、電車内での人的被害は少ないと予想されます。車の損傷の大きさを優先して迷いがちですが、電車の強靭さを信じて車を移動させることは諦めます。

脱出避難後にすることは?

破損の有無に関係なく、遮断機を押して踏切内から脱出した場合や、非常ボタンを押した場合には、必ず鉄道会社に連絡します。連絡先は非常ボタンの近くに掲示されています。ない場合には最寄りの駅に連絡します。

非常ボタンと連絡先

<出典画像:『非常ボタンと連絡先』https://tse4.mm.bing.net/th?id=OIP.ieQQfmVvDYj9AyZGgXSjBwAAAA&pid=Api>
最近の踏切の多くは障害物検地システムを備えています。仮に非常ボタンを押し忘れたとしても、警報機が鳴っている時に踏み切り内を通過すると、そのシステムが作動して、通過しようとする電車の運転士に伝わります。その信号は自動的に電車を停止させますが、信号を解除するには、鉄道の係員が踏切まで行き、安全を確認して解除しないと電車は動かない仕組みになっています。


<出典動画:『【カメラが捕らえた!!】宇都宮線 緊急停止の瞬間!!』YouTube>

鉄道会社の迷惑や損害を出来るだけ少なくする意味でも、速やかに連絡をしなければなりません。

故意による場合でない限り、遮断機の破損の損害を請求されることはないと考えられるので、ためらわず連絡をします。

踏切の車での横断の仕方

  1. 運転席側の窓を少し開け、踏切の手前で一時停止します。踏切によっては左右の見通しが悪い場所があるので、形だけの停車でなく、確実に目視できる位置までにじり寄って電車の接近を確認します。警報機のあるなし、遮断機のあるなしに関係ありません。
  2. 警報機が鳴っていないこと、前方の踏切を出たところに自分の車が進めるスペースがあることを確認したら踏切内へ入ります。踏切の中だけでなく、踏切を出た先の自分のスペースが空くまで待ちます。後ろからクラクションが鳴っても待ちます。BlogPaint
  3. 踏切内は路面に凹凸があるので、AT車、MT車に関係なくギアシフトは変えてはいけません。特にMT車は、クラッチ操作のミスや、ギアの噛み具合の不備で、エンストする可能性はあるので厳守です。

遮断機を破損してでも脱出すべき根拠

法律的な建前では損害賠償の責任はあるが

民法709条では、「故意ではなく過失(注意義務違反)により他人に損害を与えた場合でも損害賠償義務を負うと」定めています。どんな理由があろうと、電車を止める原因を作った人に過失がある場合には、生じた損害を鉄道会社に賠償する責任があります。刑事上の責任とは別に、民事上では、電車を止めた過失に対して、鉄道会社には損害賠償を請求する権利があります。

  • 止まった電車の代わりに運行させるバスの費用。
  • 切符の払い戻しによる損失。
  • 遮断機や電車の修理費用。
  • 電車を止めたことに対する鉄道会社への慰謝料。
  • 事故の処理に対応した職員や要員への人件費。
  • 負傷した乗客の治療費や慰謝料。

これらの全部、または一部の損害を、電車を止めた車の運転手またはその家族に、賠償を求める権利が鉄道会社にあると考えられます。

故意でない限り損害賠償請求されることは少ない


<出典動画:『踏切内で立ち往生!』YouTube>
しかし、踏切の中で車を立ち往生させた過失責任は、故意によるものでない限り、鉄道会社としても損害賠償を求めることは、実際には少ないようです。その理由として、次のような点があげられます。

  1. 車の故障や運転手の体調不良が原因である場合、過失責任を問うことが難しいと鉄道会社が判断した。
  2. 運転手に過失責任は認められるが、鉄道会社に実質的な損害が発生しなかったと鉄道会社が判断した。
  3. 運転手に過失責任が認められ、鉄道会社にも損害が発生したが、運転手やその家族に損害賠償を請求しても、支払いは不可能であると鉄道会社が判断した。

自動車保険が適用可能

仮に、鉄道会社から損害賠償を請求された場合、車との衝突により損傷した電車の修理費や、負傷した乗客の治療費などは、車の任意保険(対物、対人)が適用できます。対人、対物の保障は無制限が基本なので、この2つの損害に関しては保険で助けてもらえると考えられます。

全体を通して考えた時に、被害を少なくし損害の賠償を回避できるためには、遮断機を押して脱出したり、非常ボタンを押して知らせるなど、事故を避けようと努力した行動が認められる必要があります。

踏み切り内で立ち往生した場合には、躊躇しないで、遮断機を折ってでも脱出することや、車が動かせない場合には、車を捨てて非常ボタンを押すことを優先させましょう。