バック駐車を極めるのは、意外に奥が深いのです。一発で駐車スペースの中に入れることが出来るようになっても、車体が斜めになってしまう人はたくさんいます。

車体が真っ直ぐに入れられるようになっても、駐車スペースの片側に寄ってしまう人もいます。どんなベテランでも、毎回のバック駐車で、

  • 一回で駐車スペースに入る。
  • 車体が真っ直ぐになる。
  • 駐車スペースの中央に停車する。

という3拍子揃って完璧に出来る人は少ないのではないでしょうか。

今回は、車体を斜めにならずに真っ直ぐにすることと、駐車スペースの中央に停めることが出来る方法を考えてみます。そのためのツールの使い方として、サイドミラーの見え方を知る必要があります。

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サイドミラーは凸面鏡

見通しの悪い所に立っているカーブミラーの表面が、膨らんだ球面なっているのは、なるべく広い範囲の景色を鏡の中に取り込みたいからです。

車のサイドミラーも、カーブミラー程ではありあせんが、微かに膨らんだ球面になっています。役割もカーブミラーと同じで、小さな鏡の中に広い範囲を映したいためです。

このような鏡を凸面鏡(とつめんきょう)といいます。凸面鏡の特徴は、広い範囲の光を鏡の中央に集めます。そのため、遠くの景色は実際よりも遠くに、実際よりも中央に寄って見えます。

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<出典画像:『凸面鏡の特徴』>

スプーンの膨らんだ面に、並行した2本の線を映すと、スプーンの端では間隔が狭く、スプーンの中央では間隔が広く見えます。

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<出典画像:『スプーンに移した平行な2本の線』>

駐車場の白線をサイドミラーに映した場合も、カーブミラーやスプーン程極端ではありませんが、同様の現象が起きています。

バック駐車で、車の横にある白線は、サイドミラーの中では、手前は実際よりも車体から離れて見え、奥の方は実際よりも車体に近く見えます。

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<出典画像:『サイドミラーに映る白線と車体との間隔』>

平面の鏡でも、遠近法で遠くのものは中央に寄って、手前のものは外側に広がって見えます。凸面鏡は、自然な遠近法よりも更に誇張された見え方になります。

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<出典画像:『遠近法によるものの見え方』>

車体は完全な直方体ではない

白線に平行になる様に比較する対象の車体のラインは、正確な直線ではありません。ほとんどの車は、正面(フロント側)や背面(リア側)から見た時、車の上の方が狭くなっています。完全に四角い箱のような直方体ではありません。

NOAH車体サイズ

<出典画像:『NOAHの車体寸法図』https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-15-e7/ogw2ogw2/folder/709574/62/38584962/img_0>

サイドミラーから見える車体の後部側面は、下側から続いた直線が上側にかけて斜めのラインになります。このため、遠くの白線と車の間隔の狭さを心理的に緩和させる効果を持ちます。車体の上側も下側と同じ直線のラインだったら、もっと狭く感じられるはずです。

サイドミラーに映る車体と白線

<出典画像:『サイドミラーに映る白線と車体後部のライン』http://carinformation.xyz/wp/wp-content/uploads/2017/03/c8ddd5eda68465cf5dc70bb8bf87a323_s.jpg>

特にエスティマなど、全長が長くて上体が丸みを帯びたワンボックスタイプの車は、遠くの白線と車体との間隔が実際より狭く感じられるはずなのに、上体の曲線のためにそう感じさせ憎くしています。そのため、白線と車体を平行させることだけを頼りに真っ直ぐにしようとすると、実際の距離感を複雑に惑わされて、結果は斜めになりやすいのです。

エスティマの丸みを帯びたボディライン

<出典画像:『エスティマの丸みを帯びた上体のボディライン』http://www.do-blog.jp/raisen/photo/20150502-1957.JPG>

サイドミラーのどこを見れば斜めにならないのか?

サイドミラーを見ながら車体の斜めを整える場合には、2つの鉄則があります。

  1. 片側だけに頼らず両側のサイドミラーを見比べること。
  2. 車体の側面と白線を平行にするのでなく、車体最後部両側と白線との間隔を見比べること。

サイドミラーは凸面鏡で、車体の上部は斜めのラインになっています。白線と車体を平行にさせるには、それらを勘案したコツが必要です。また、白線と車体側面を平行にしようとすると、どうしても片側のサイドミラーに偏ることになり勝ちです。

微かですが、歪んだサイドミラーの中で、しかも片側のサイドミラーだけで、白線と車体側面を平行にするのは、実は難しいテクニックなのです。

もっと簡単で確実に車体を真っ直ぐにできるサイドミラーの見方があります。

両側のサイドミラーで、車体の左右の最後部と、白線の隙間が同じになるようにするのです。

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<出典画像:『車体両側最後部と白線の間隔が同じようにする』>

サイドミラーで色々なところを見る必要はありません。車体の後ろの端と白線との間が、左右で同じになるように調整するだけです。

  • 左右で一点だけ見れば良い。
  • 遠くのポイント(車の最後尾)を注視するので後部の衝突も防げる。
  • 斜めになるのを防ぐだけでなく、駐車スペースの中央に停車できる。

などの利点もあります。

私も片側だけのサイドミラーに頼るのを止めた

私も長い間、片側のサイドミラー(内側のサイドミラー)と白線を平行にする方法で、車体を真っ直ぐにしようとしていました。このブログでも最初の頃にその方法を紹介している記事もあります。

しかし、完璧に真っ直ぐにならなかったり、駐車スペースの中央でなかったりするのが不満でした。その両方の悩みを解決してくれたのが、両側のサイドミラーで、車体の後部と白線の隙間を等しくさせる方法です。

バック駐車はサイドミラーだけで行うものではありません。本当は、駐車スペースに入り込む段階で車体を真っ直ぐにしておくべきです。そのために、一旦入った後に前進して、幅寄せして車体を真っ直ぐにする方法も紹介しています。

『バック駐車でどうしても車体が斜めになって真っ直ぐに停まられない人へ』

斜めになった車体を、サイドミラーで真っ直ぐに操作するというより、ほとんど真っ直ぐなものを、微調整しながら中央へ停めるというのが理想です。一発でバック駐車しなくても良いのです。

駐車場で、真っ直ぐスペースの中央に駐車させている車を見ると、「この車の人、運転上手いな」と思います。