接触事故の時、ドライブレコーダーなどの証拠はなく、お互いが100対0を主張している状況で、「こちらはその瞬間止まっていた!私は当てられた方で悪くない」ことを証明したい場合、車の傷から、どちらの方から当てたのか分かるのでしょうか?

バック駐車で後退している時、狭い道で擦れ違う時、ちょっと油断して安全確認を怠り、接触事故を起こすことは珍しくはありません。

ぶつかった後に、振り返って見ると、「その瞬間にこちらは止まっていたはず」とお互いが思い込んいる場合、映像記録や目撃証人がいなければ、傷の付き具合で判断するすることが可能なのか調べてみました。

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傷の付き具合で分かること

  • 基本的には、どちらか一方が止まっている場合には傷の長さは短く浅くなり、両方が動いている時には傷は長く深くなります。

    水平に長い傷

  • 傷の始まりの方は深く、傷の終わりの方が浅くなるので、傷の方向によってぶつかった方向が分かります。

    傷の始まりと終わり

  • きれいな水平の傷は、車かそれに類する機械的なものと考えられますが、斜めの傷は人為的な原因によるものと考えられます。

    いたずらによる傷(通称10円パンチ)

  • 車が当たった部分より、柔らかいものへぶつかった場合の傷は浅く滑らかで、硬い物へぶつかった場合は、深くざらついた傷になります。

    コンクリート塀にぶつけた傷

  • 傷やへこみが角張っている場合は、傷の部分の材質より硬い物に、傷やへこみが丸みを帯びている場合は、傷の部分の材質より柔らかいものにぶつかった可能性が推測できます。

    ガードレールにぶつけた傷

    ポールにぶつけた傷

  • タイヤのホイールに付いた傷が、水平なら止まっていた証明になります。動いている場合にはホイールが回転しているので、傷は円弧上になり水平の傷にはなりません。

    バックしながら縁石を擦った傷

  • ブレーキを掛けると車のフロント部分は物理的に沈みます。相手側の傷の高さと対応するフロントの位置を比較して、傷の方が低い場合は、ブレーキを掛けた可能性が高くなります。

    ブレーキで沈み込む車のフロント

  • 縦方向の傷は動いている時には付きにくく、停止している時に付いた可能性が高いです。駐車場でドアが開いた時に、隣の車にぶつかってできる縦方向の傷などが典型です。

    ドアを開けた時にぶつけた傷(通称ドアパンチ)

  • 駐車場の接触トラブルで良くありますが、自分の車のフロントバンパーか側面の傷と、隣の車のリアバンパーの傷があった場合、傷の位置関係から当てた方、当てられた方を推測できることもあります。(リアバンパーが当てた方)

    バック時に後ろの車にぶつけた傷

傷の付き具合では分からないこと

傷の軽い・重い、浅い・深いでは、どちらから当たっていったのか分かりません。お互いの当たった部分の強度や材質によるからです。

傷の被害程度が小さいから過失割合が小さいとは限りません。例えば、バンパーの角から相手のボディーにぶつかっていった場合、材質的にも、強度的にもバンパーの傷の方が小さくなります。

過度に責任を追及することの是非は別問題

傷の大小では過失の割合は判断できませんが、傷の方向や場所から過失の大小は推測可能な場合があります。傷の持つ特性を知っていることで、事故現場での対応、保険会社への報告に役立つこともあります。

相手の主張と、傷の特徴に矛盾を発見することもあります。また、自分の誤った思い込みを、実際の傷が正してくれる場合もあります。

ただし、過度に責任を追及することの是非は別問題と思います。マンションの駐車場での接触事故の被害を、警察の鑑識に依頼して解決した事例もありますが、解決手段が人間関係を壊してしまう可能性もあります。

双方が運転中の接触事故の場合、ぶつかる瞬間は止まったとしても、信号待ちやパーキング中のように、明らかに一定の時間の停車でない限り、「止まっていたからこちらは悪くない!」と一方的に主張しても、少なくとも保険の過失割合の判断からすると、100対0にはなりにくいです。どちらも接触の前後は、危険を察知してブレーキを踏む可能性は高いからです。

お互いに納得できない場合は、現場の写真を丁寧に撮って、その資料と自分の見解を添え、保険会社に交渉を任せてしまうのが賢明です。