免許を取ったばかりの19歳の姪からきかれました。「どうして縦列駐車はいつもバックでするの?前からしちゃいけないの?」と。

私は答えに困りました。縦列駐車はバックでするのが私には当然だったし、今まで理由など考えたこともなかったからです。自動車学校でも、縦列駐車はバックでしか教えてくれませんでした。

確か縦列駐車をするには車の長さの1.5倍ぐらいのスペースが必要だと、どこかで見たような記憶があります。

そんな計測をして縦列駐車をしている訳ではないですが、なんとなく入れそうだという「勘」でやっています。

勿論、ガラガラな場所では前進のまま縁石に寄って行きます。どこからバックで縦列駐車をするのか考えたこともありませんが、おそらく1.5倍程度の隙間を直感で判断しているのでしょう。

でも、どうして広くないスペースでは、前進でなくバックで縦列駐車をするのか、明確な答えが知りたくなりました。

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前輪でしか方向を変えられないから?

調べていると、こういう回答がありました。

前輪からでも構わないんですが、前後の車の車間が空いてないと無理ですね(大変)。というのも後輪には操舵機能がなく、まっすぐしか動かないからです。ですから、まずまっすぐしか動かない後輪を押し込んで、ハンドルを切って曲がる前輪を後から入れるというセオリーになってます。前輪から行くと、後輪はただついてくるだけなので斜めに入ったまま、つまり斜めのままになってしまいます。後からハンドル切れる前輪がくれば、ハンドル切って斜め状態を直せるわけですから。街中で見てると理屈が分かりやすいと思います。参照:縦列駐車をバックでする理由

私は「そうかなあ」と思いました。前から入っても方向は変えられます。縦列駐車で方向を変えるというのは横に移動する「幅寄せ」のことです。幅寄せは前進でもバックでも出来ます。

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前から入ろうが、後ろから入ろうが、方向は変えられるので、この答えは正しくないように思えました。

姪の疑問の中には、「内輪差とか外輪差って関係ある?」というのもあったので、そちらも検討してみましょう。

内輪差や外輪差に関係があるか?

内輪差というのは、曲がる時の内側の前輪と後輪の関係で、後輪の方が前輪よりも内側を通る性質です。外輪差とは、曲がる時の外側の前輪と後輪の関係で、後輪の方が前輪より内側を通る性質です。どちらも後輪の方が前輪より内側を通ります。 BlogPaint

内輪差が問題になるのは、前進で角を曲がる時に内側を通る車の後部が角にぶつかることです。外輪差が問題になるのは、バックして曲がる時に外側の車や壁などに、車の前部がぶつかることです。 BlogPaint

内輪差は前から入る時に、外輪差はバックで入る時に、隣の車や壁にぶつかる危険性があります。どちらにも同じ危険性があるので、どちらが有利とは言えません。 BlogPaint

回転の円の中心が後輪の軸の延長線にあるから?

他の回答の記事の中に次の意見がありました。

前進ではいると車体をまっすぐにするのに
長い距離を必要とするのに対して
バックではいると前進の半分のスペースで駐車できるからです。参照:『縦列駐車をバックでする理由』]

やはり必要とするスペースの違いが一番有力な理由に感じました。ただバックの方が前進の半分のスペースというのは本当なのかと思いました。

といことで、図面上で調べて見る事にしました。前進とバックで縦列駐車に必要なスペースがどのくらい違うのか。

例として、ワゴンRを最小回転半径で回転した時の45度から90度までの軌跡を切り取ってみました。 実際の縦列駐車の場合も、この軌跡の範囲と同じ部分が行われています。

先ず、バックの縦列駐車を想定して、最小回転半径でバックした45℃から90度の軌跡が納まる長さを調べます。 wagonR-jyuuretu-back

4.64mのスペースが必要なことが分かりました。では、前進で縦列駐車をした場合を想定して、最小回転半径で前進した45℃から90度の軌跡が納まる長さを調べてみます。 wagonR-jyuuretu-front
前進した場合は5.95mになりました。バックした場合との差は、5.95m-4.64m=1.31mで、両者の比は、4.64m/5.95m=約1.28になります。よく言われる1.5倍より小さな割合になりましたが、バックで行う方が少ないスペースで済むことが分かりました。

この過程でもう一つ判明したことがあります。

前進ではオーバーハングのデメリットもある

上記の前進した図を見ると分かりますが、縁石ギリギリに入っても、車が90度になった時点では縁石から離れています。

これはオーバーハング(フロントオーバーハング)といって、前輪の車軸の中心から車体前部の端まで距離があるため、その分だけ縁石とのスペースが必要になるからです。これは外側は前輪が後輪よりも外側を通る外輪差の影響です。

バックで入る場合には、縁石の近くまで寄せることが可能です。バックの場合でも後部のオーバーハング(リアオーバーハング)はありますが、外輪差のために吸収されてしまうからです。 BlogPaint

前進で入った場合には、縁石に近づけるための幅寄せの手間が必要になります。

以上のことから、縦列駐車をバックでする理由として、

  1. スペースが少なくて済む。
  2. 一度で縁石の近くに寄せることが出来る。

の2つのメリットが導き出されました。前進でも外輪差が関係していましたね。私なりに疑問は溶けたのですが、いかがでしょうか?