• あなたは左折を不安に感じたことはありませんか?
  • 安全の確信が持てないまま、なんとなく左折していませんか?

自働車学校でも左折する時の巻き込みは十分注意されます。左のサイドミラーを良く見て、目視でも死角を確認します。私も「巻き込み、良し」などと、声を出しての安全確認をするよう指導を受けました。

そういう危険性は理解しているつもりなのに、何か不安を感じるのはなぜでしょう?

  • 巻き込みを防ぐ対策は十分なのか?
  • 危険は巻き込みだけなのか?

左折と言っても、一つとして同じ交差点はないし、同じ交差点でも時々刻々状況は変化しています。それなのに、「曲がる時巻き込みに注意する」だけで良いのでしょうか?

そういう漠然とした不安を抱えたまま、左折を行っているから不安が残るのです。その不安を解消するには、まだあるであろう危険を洗い出し、いつでも、どこでも通用する安全な左折をルーチン化することです。
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左折のルーチン化に必要なこと

安全な左折をルーチン化するには、

  • 左折に潜む危険を全て洗いだすこと。
  • その危険を防ぐ対策をすること。

です。

左折する場所に合わせて、その都度なんとなく行動するのではなく、どこでも通用するように、予測した危険を回避できるルーチンで行えば、身構えることもなくストレスのない左折が出来ます。

左折には4つの危険が待ち構えている

例えば、ウインカーを出して3秒後に左の車線に移動して、曲がる30m手前で再びウインカーを出し、徐行しながら左折を完了するまでの僅かの間には、事故につながる可能性のある4つの危険が待ち構えています。

1、左後方から忍び寄る自転車とバイク

左に曲がる車が左後方を直進する自転車に気が付かず、巻き込んでしまった光景を、私は目の前で見たことがあります。自転車を巻き込んでからも、車は数メートル止まりませんでした。

幸いその時の事故は、乗っていた若者が自転車を放り出したのでケガはないようでしたが、車の助手席側のドアには大きな傷が出来、自転車は車の下に歪んで挟まっていました。

左のサイドミラーに写らない死角に入ってしまった自転車やバイクは、左折の最大の危険です。

2、横断歩道に忍び寄る歩行者

左折の場合に遭遇する横断歩道を渡る歩行者は、右折の時より視認しやすいですが、歩道の方から走って来たり、遠慮して車をやり過ごそうとする人がいたり、歩くのが遅くて、こちらが待ちきれない衝動に駆られたり、油断が出来ない危険をはらんでいます。

私の父は、向こうの歩道(左折する運転席から見ると右方向)から横断歩道へ渡ろうとする人がいる時に左折して、後方にいたパトカーに取り締まられた経験があります。

歩行者は横断歩道に足を踏み入れた瞬間で、距離的にも十分に離れていたので、安全に左折したのですが、歩行者を優先しなかったということで切符を切られました。

私は左折する時にこのことを思い出します。渡ろうとする歩行者が、どの位置なら左折しても許されるのか?あるいは許されないのか?

3、前方から忍び寄る右折車

「松本走り」「山梨ルール」などと呼ばれている、左折車に割り込む右折や、「茨城ダッシュ」「伊予の早曲がり」など呼ばれる、青信号直前の右折をする人がいます。恥ずかしながら、私もやっていた一人です。運転熟練者のテクニックだと勘違いしていました。危険極まりない行為だと感じていなかったのです。

このような右折は、本人だけが自己満足する右折で、周囲にどれだけ不快感や恐怖を与えているか自覚していないのです。私もこのような右折をされる側から見た時、「この人うまいな」と思う右折は滅多にありません。「強引だな」と感じる右折ばかりです。

こういう右折を自分もしていたのかと分かりました。事故に直結する行為なので、今まで事故を起こさなかったのは奇跡的な幸運でしかありません。

かつての私のような右折をする人は、まだまだいます。悲惨な事故のニュースが報じられてもです。「自分だけは大丈夫」と思い込んでいるのです。こういう右折車も想定しておく必要があります。

4、内輪差による物や人への接触

自動車学校で経験したような、内輪差を注意しなかったために起きた脱輪は、信号機のあるような交差点では、先ず起きることは少ないでしょう。

起きる可能性が高いのは、信号機のない小さな交差点を左折する時や、道路に面した駐車場への出入りで左折する際に、ガードレールやポール、ブロックに当たったりする事故です。

ただし、繁華街や駅前の歩行者で溢れかえるような交差点を左折する場合には、内輪差によって、歩道ギリギリに立っている歩行者に接触する可能性はあります。

4つの危険の守り方

左折にまつわる危険を4つと割り出しました。この4つの危険への対策をしておけば、どんな場所、どんな状況でも対応できる左折になります。

左後方の自転車とバイクをブロック

左折の最大の危険要素である、左後方から走り抜けていく自転車とバイクへの対策が最重要です。

JAF関連のホームページ(「JAFMate」)では、左後方の自転車やバイクに対して、「幅寄せ」して車の側面に入り込むのをブロックするように推奨しています。

<出典動画:『JAFMate|なるほど運転レッスン「左折のしかた」』YouTube>

その根拠にも挙げているのが、下記の道路交通法の条文です。

「左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつできる限り道路の左側端に沿って徐行しなければならない」(道路交通法34条第1項)

確かにこの条文の主旨を素直に解釈すれば、

自転車やバイクの入り込む余地をなくすために左側端に車を寄せるように理解できます。目的は巻き込み事故の防止です。

しかし、「巻き込みを防ぐため」(目的は?)とかの記述もなく、「あらかじめその前から」(何m手前?)「できる限り道路の左側端」(端から何㎝?)と、曖昧な表現になっています。

  • 目的は巻き込み防止と考えて良い。
  • 何m手前から左側端に寄るかの規定はない。
  • 左側端から何㎝離れて寄るかの規定もない。

曖昧な要素のままでは、普遍的左折のルーチン化ができないので、なんとか明確にしなければなりません。

何m手前から左側端に寄れば良いか?

左折のウインカーを出すタイミングは交差点の30m手前と決められています。このタイミングと左側端に寄るタイミングを連動するのが自然です。従って交差点の30m手前で、ウインカーを出し(安全を確認の上)左側端に寄るとルーチン化します。

左側端から何㎝離れて寄れば良いか?

この疑問の答えは単純ではありません。なぜなら道路には路側帯がある場合とない場合があるからです。路側帯とは歩道がない道路に、歩行者(条件付きで自転車などの軽車両)の安全のために設けた、線で区切られた通行区域です。この路側帯を車やバイクは走行出来ません。

下の写真で見ると、左側は歩道がないので路側帯の白線が引かれています。右側には歩道があるので路側帯はありません。右側の白線は車が走行する領域を示す「車道外側線」と呼ばれる境界線です。

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<出典画像:『路側帯』https://c6.staticflickr.com/9/8787/28507833485_f7287b5bfd.jpg

路側帯がない道路なら、道路の左側端に寄せられますが、路側帯がある道路では路側帯より中へは寄せられません。この2つの場合の違いがルーチン化を難しくします。

自転車は、以下の条件を守れば路側帯を通行出来ます。

  • 歩行者の邪魔をしない。
  • 逆走(右側通行)しない。

ということは、路側帯を自転車が走ってくる(中には違反を無視してバイクが走ってくる場合もあります)ので、左折のためにブロックすることは出来ないでしょうか?。

路側帯の幅は道路環境によって異なります。私の家の近所を調べたところ、45㎝、55㎝、60㎝(縁石から路側帯の線の内側までの寸法)の3種類ありました。線の幅15㎝を加えると60㎝、70㎝、75㎝になります。小学校の周囲では1m以上の路側帯になっていました。

ちなみに、路側帯は75㎝以上を原則として、止むを得ない場合は50㎝以上を確保するように規定されているようです。

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<出典画像:『路側帯の白線幅15㎝』>

路側帯は歩道がない道路に設置されるものなので、比較的大きな道路より、狭い道路に多く設けられています。(歩道がある大きな道路に設置されている路側帯に似た線は、車の走行領域を示す「車道外側線」です)そのため、路側帯を十分広く取れる道路は少ないはずなのです。

そう考えると、75㎝の幅の路側帯を路側帯の標準と捉えても良いのではないかと思います。その根拠は、75㎝というのが道路構造令という道路を作る法律の中で、歩行者の占有幅として採用されているからです。歩行者が通行するのに75㎝の幅を基本にしています。

道路利用者の基本寸法

<出典画像:『道路利用の基本的な寸法』http://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_2-2.pdf

路側帯の中に駐車する場合に、歩行者のために75㎝以上を空けるように規定されている理由も同様の根拠を基にしていると思われます。

左折で問題になるのは路側帯を通行する自転車です。自転車の占有幅は1mと考えられています。75㎝の路側帯は自転車にとって窮屈に感じられます。つまり、75㎝の路側帯ギリギリに幅寄せした場合、自転車をブロックする効果はあると考えられます。バイクなら尚更です。

自転車道幅員の考え方

<出典画像:『自転車道幅員の考え方』http://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_2-2.pdf

ところで、路側帯がない道路では、どのくらいまで側端に寄せれば良いでしょうか?

目安になるのが、路肩を避けた分だけ側端から離れて寄せるという考え方です。厳密に言えば、「保護路肩」と呼ばれる、アスファルトとは別に、コンクリートで出来た、縁石に沿って設けられた構造物です。

路肩というのは、道路の端から車道外側線の間のことです。下の写真は「半路肩」という種類の路肩です。車道外側線がない場合には、「保護路肩」のコンクリートの部分を路肩と呼ぶことになります。左折の場合には「保護路肩」に注目します。

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<出典画像:『路肩と保護路肩』https://car-moby.jp/187292

保護路肩の幅は様々で、私が近所を歩いて見ただけでも30㎝弱、40㎝、50㎝の3種類がありました。一般の道路では50㎝幅の保護路肩が最大幅ではないかと思います。

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<出典画像:『約30㎝の保護路肩』>

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<出典画像:『約40㎝の保護路肩』>

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<出典画像:『約50㎝の保護路肩』>

保護路肩の上を走行することは、車両制限令第九条によって禁止されています。保護路肩がない一般の道路では側端から50㎝、保護路肩のないトンネルの中や橋の上は25㎝内は走行が制限されています。

つまり50㎝側端から離れればこれらの制限をクリアすることになります。50㎝の中を強引に入って来る自転車やバイクは考えられないので、ブロックできます。

路側帯の75㎝の幅を標準とし、路側帯のない道路の保護路肩を50㎝を最大とします。75㎝なら両者をクリアできます。路側帯があってもなくても、左折する時には左側端から75㎝まで寄せるというルーチンです。あるいは距離的な数値でなく、路側帯の線までか(路側帯がある場合)、保護路肩の手前まで(路側帯がない場合)というルーチンでも良いでしょう。

法的にも、左折の合図をしている先行車を、後続の車両が妨害することは禁じられています。自転車やバイクよりも前で路側帯や路肩の方へ寄せて行けば、巻き込みを防ぐためのブロックは可能と考えられます。

左折又は右折しようとする車両が、前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路>の変更を妨げてはならない。(道路交通法第34条6項)

右折車の動向を見極める

交差点に近づいた時、対向車で右折しようとしている車が、こちらが左折するのを待っているのか、こちらより前に右折しようとしているのか判断する必要があります。

こちらの車と前を走る車との距離が少し空いている場合に、その隙に右折しようとする車があります。「松本走り」「山梨ルール」などと呼ばれる右折の仕方です。

こういう車はかなりの高い確率で判別できます。飛び出せるタイミングを計っているので、静止せずに微かに前進と停止を繰り返しています。

隙間を狙って右折しようとする車は、こちらが左折するためにスピードを緩めた瞬間を察知して右折してきます。そうでない車は微動だにせずに右折車線で静かに待機しています。

右折する車のタイヤの向きでも感じられます。飛び出そうと待ち構えている車は、タイヤの向きを右に向けています。ゆっくり待っている車のタイヤは前方を向けたままが多いのです。

また隙を狙っている車は、停止線より前に出て、少しでも早く右折出来るように詰め寄った位置についています。あからさまに車を傾けている場合もあります。待機している車は、停止線の手前で静かにしています。

<出典動画:『ドラレコ 割り込み右折はやめてくれ!側面にぶつけるぞ!』YouTube>

このように、右折しようとしている対向車を素早く感じ取ったら、余裕を持って先に行かせてしまいます。意地を張って競り合うのは危険です。「負けるが勝ち」という戦法です。

横断歩道の左右の歩行者を確認する

横断中の歩行者を確認すれば、歩行者が歩き過ぎるまで手前で停車しますが、問題は横断しようと左右から近づいてくる歩行者や、まだ横断歩道の遠くを歩いている歩行者(広い交差点の場合)を確認した時です。

物理的に車を先に行かせることが可能な場合に、横断歩道の手前で停止する確かな心づもりを持っていないと、早く行きたい誘惑に負けてしまいます。

法的にも、横断しようとする歩行者がある時には、手前で停止しなければなりません。「横断しようとする歩行者」は、目の前だけでなく、横断歩道の左右を確認する必要があります。横断中の歩行者だけでなく、横断歩道を渡ろうとする歩行者も確認する必要があります。

<出典動画:『横断歩道上に歩行者がいるのに…』YouTube>

時には後続の車からクラクションを鳴らされる可能性はありますが、人身事故を起こしてしまうより遥かにましです。それに、私の父が経験したように、警察官が目撃していたら、即取り締まりの対象になることでしょう。

内輪差は後輪で回る意識で防ぐ

内輪差というのは、曲がる時に後輪は前輪より内側を通る性質のことです。自動車学校で左折で脱輪してしまう原因は、前輪で角を曲がる意識のためです。前輪は角を曲がれても、後輪がその内側を通るので縁石に乗り上げてしまいます。

内輪差を考慮して角を曲がるには、後輪で角を曲がるように意識することです。

<出典動画:『ハンドル早く切りすぎだよ!』YouTube>

左折のルーチン

以上で、4つの危険から自分の車を守りながら左折するルーチンの準備が出来ました。

  1. 交差点の30m手前で左折をする合図を出す。
  2. ルームミラー、左サイドミラー、目視の順で左後方、左側面の安全を確認して路側帯または保護路肩まで左に幅寄せする。この時、車の左側面に自転車やバイクが走行している場合には、それらの後方に下がり、決して前に出ようとしない。
  3. 路側帯または保護路肩まで寄せたまま(自転車やバイクをブロックしたまま)、交差点まで徐々に速度を落として行く。この時、対向車線の右折車の動向を確認し、割り込み右折をする気配なら先に右折させる。
  4. ハンドルを左に回す直前に、左サイドミラー、目視で車の左後方、左側面の安全を確認し、同時に横断歩道左側の歩行者の存在を確認する。歩行者があれば停止する。
  5. 徐行しながら左折を開始し、横断歩道の手前で、横断歩道の右側の歩行者の存在を確認する。この時、割り込み右折の存在も確認する。歩行者があれば停止する。
  6. 歩行者がいないことを確認して左折を完了する。

ポイントは、

  • 左に曲がる前に、巻き込みの確認、対向車の割り込み右折を確認する。
  • 左にゆっくり曲がりながら、横断歩道の左右の歩行者と右側から来るかもしれない割り込み右折を確認する。

言葉で書くと簡単ですが、極短い時間の中での操作です。イメージから言えば、横断歩道を中心にして、左側の注意に6割、右側の注意に4割といった配分です。

防衛戦のための武器

安全な左折をするためのテクニックとして、「送りハンドル」をマスターすることと、意識の持ち方として、「横断歩道の手前で一時停止するぐらいの警戒感」の維持をおすすめします。

確認の時間を作る送りハンドル

「送りハンドル(プッシュプルハンドル push pull handle)」というのは、自動車学校で教えられる「クロスハンドル cross handle」と違って、腕を交差させないハンドルの回し方です。

ハンドルを左右の手をずらすようにして、少しづつ回すので、一気に大きく回転することが出来ません。このことが、左折のようにゆっくり曲がりながら、確認する作業が多い場面では有効に働きます。一瞬で回り込まないので、危険を察知した時に停車しやすいのです。

巻き込みや歩行者を確認しても、クロスハンドルでは途中で回避するのが非常に困難です。送りハンドルなら回転する量が少なく遅いので、瞬時に停車して被害を軽度に抑えられます。

<出典動画:『クルマの運転の基本 ~ハンドル操作(回し方)~ 「プッシュプルハンドル」』YouTube>

送りハンドルで左折すると、クロスハンドルよりゆっくり左折するので、その分周囲の確認をする時間を作ることが出来ます。

送りハンドルは、内輪差の事故を防ぐ効果もあります。ゆっくり、少しづつ角を曲がるので、大きく内側に食い込むことがないからです。

私は、送りハンドルを覚えてから、クロスハンドルを使う割合が大きく減りました。急いだり、狭い場所で大きく車を回転させる場面は、運転している中でそんなに多くはないのです。

事故の起こる確率は車を回転したり、方向を変化させる時が高いのです。送りハンドルで時間的な確認の余裕が出来るのは、事故防止に大きく影響します。

一時停止するぐらいの警戒感

路線バスの後ろに、「左折の時には一時停車します」という表示がされているのを目にします。

バスのような大型車だから慎重なのだと思いますが、一般車もこのぐらいの気持ちで運転した方が良いと思います。

一般車がバスのように堂々と停車すると、かえって後続車には危険ですので、瞬時に停車できる速度で左折する意識、警戒感が必要だと思います。横断歩道の周りには、地雷が埋まっているぐらいの慎重さが必要です。

左折は思っている程、単純ではないのです。

<出典動画:『JAF Mate|「危険予知」前車に続いて交差点を左折します。』YouTube>