いつもバック駐車で真っ直ぐ入れない。一旦前進してまた下がる。この前は、ちょっと前進して切り返したけれど、完全に真っ直ぐにならなかった。今度はもっと大きく前進して切り返したら、なんとか真っ直ぐになった。

切り返すために前進するのはかっこ悪いから、駐車枠の中で調整しようとしたけど、車を降りて見ると、かえって余計曲がっていた。サイドミラーで真っ直ぐにしたつもりなのに、曲がってしまった。

いつもこんな調子で、バック駐車が真っ直ぐに出来たり出来なかったりしていませんか?真っ直ぐになるのは偶然みたいな風に捉えていませんか?

バック駐車で真っ直ぐ入れない人の多くが陥っている原因があります。この原因を理解すれば、偶然性を無くして、常に一発で真っ直ぐ入れるようになります。

幾何学模様

バック駐車が曲がる原因

ほとんどの駐車場は、バック駐車が可能なスペースを確保しています。バック駐車が可能なスペースとは、車を斜めに傾けて切り返しせずに、一回でバックして駐車できるスペースです。

しかし、車が曲がって入ってしまうと、駐車枠の中で立て直すのは難しいのです。奥行5~6mの距離で曲がった車の向きを真っ直ぐにするには、距離が十分ではありません。実際は、後輪が数メートル入ってしまっているので、立て直すために使える距離はもっと短いのです。

バック駐車で曲がってしまう原因は3つあります。

  1. スペースを一杯に使って車を大きな角度で傾けていない。
  2. 近づけることと回転することを同時に行っている。
  3. 駐車枠の中で調整しようとしている。

何のために角度をつけて車を傾けるのか、本当の意味が分かっていません。だから、もっと大きな角度で傾けるスペースがあるのに、45度ぐらいがいいのではないか、ぐらいの認識で行っているのです。

それから、想像してみてください。空き缶を立てて、その空き缶に数メートル離れた位置から、内側後輪を当てるゲームです。離れた位置から回転しながら当てるのと、真っ直ぐ下がって当てるのとどちらが簡単、確実ですか?

斜めに傾けた車を、どこかで真っ直ぐに戻さなければなりません。問題はどの地点で戻すのが良いかです。離れた位置で回転しながら駐車枠の中に入るのは、車を真っ直ぐに回転させることと、駐車枠に入れることの2つの事を同時に行っているのです。

1つでも難しいのに、2つ同時では尚更です。

多くの人がバック駐車を難しくしているのも、この点です。多くの人は回転しながら車を真っ直ぐにして、回転しながら駐車枠に入れようとしているのです。

更に車体が真っすぐになったかどうかの判断にも原因が潜んでいます。ほとんどの人が、曲がってしまった後に判断しています。

バック駐車を一発で真っ直ぐ入れる方法

バック駐車を簡単、確実にするには先ず2つのことを分けます。

  1. 真っ直ぐに近づいて駐車枠に確実に入れる。
  2. 少ない回転で確実に真っ直ぐに戻す。

バック駐車に限らず、どんなことでも2つのことを同時に実行するのは難しいことです。ところが、運転が苦手な人、バック駐車が苦手な人でも、こんな難しいことを行っているのです。

理論的にはどの角度からでも駐車枠に入れることは可能

駐車枠のどこをターゲットポイントにすれば良いでしょうか?

当然、駐車スペースの中央に真っすぐに車を収めた時のタイヤ、あるいはボディ側面の延長線と、駐車スペースの入り口の水平ラインが交わる辺りなのは想像できます。

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<出典画像:『駐車枠のターゲットポイント』>

真っ直ぐターゲットにバックして行けば、どんな角度からでも確実に近づくことができます。駐車場によって、通路の幅は異なります。通路の幅が広い程、車を大きな角度で傾けることが出来ます。駐車枠に対して垂直(90度)に近づくほど、バック駐車は簡単になります。

ですから、通路の幅に合わせて、出来る限り大きな角度で車を傾けたい訳です。言い方を変えれば、駐車場によって、車を傾ける角度は変わってくるということです。

どんな角度であっても、直線的にバックすればターゲットへ近づくことは可能です。

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<出典画像:『ターゲットポイントへの自由な直線的な角度』>

出来るだけ大きな角度でターゲットに照準を合わせる

しかし、車は直線からいきなり角度をつけて曲がることはできません。最小回転半径以下の円周の軌道に沿ってしか曲がれません。直線的にバックしてターゲットポイントに近づけても、角度が小さければ駐車枠に入りきれません。

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<出典画像:『ターゲットポイントと角度による駐車枠への進入の違い』>

大きな角度でターゲットに照準を合わせる程、バック駐車が容易になります。傾ける時には、スペースが許す範囲で可能な限り大きな角度で車を傾けるのです。傾ける角度の大小には意味があるのです。ただなんとなく車を傾けるのではなくて、大きな角度でターゲットに照準を合わせる意識を持って傾けるのです。

例えば通路から入って来て、右側の駐車スペースに入れる場合、ターゲットに対して、右側後輪がターゲットに対して真っ直ぐになる様に、車を左に傾けます。通路から入って来て、右側駐車スペースに車を寄せて行き、ターゲットと右側後輪が接近するようなイメージで車を左に傾けます。この時に、出来る限り大きな角度で傾けるのです。

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<出典画像:『スペースが許す限り大きな角度で傾ける』>

ここで後輪をターゲットに対して真っすぐに出来なかった場合には、下がり始める初動の段階でハンドルを調節して真っ直ぐになるようにします。つまり、傾ける時に角度を誤っても、初期の段階で修正は可能なのです。

ピストルの照準を合わせるように、右のサイドミラーを見て、ボディー側面の延長線がターゲットに向くように調整します。右側後輪がターゲットに向いているかの判断は、右側ボディの側面がターゲットに向いているかで判断した方が分かりやすいからです。

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<出典画像:『右側サイドミラーから見たターゲットへの照準』>

近づく角度によってターゲットエリアは変化する

引き続き右側の駐車スペースに入れる場合の例で進めると、右側サイドミラーで右側後輪、あるいは右側ボディの側面の延長線がターゲットエリアを捉えたら(右側後輪が直接見えていなくても、そう判断できたら)、その場で右側後輪を軸にするイメージで回転します。

ターゲットでなくターゲットエリアとしたのには意味があります。ターゲットに対して垂直(90度)で近づければターゲットポイントに直線で到達できますが、それより角度が小さくなる程、ターゲットポイントから離れたところまでしか直線では近づけません。ターゲットのポイントまでは、90度以外では直線では近づけないので、ターゲットの周辺という意味でターゲットエリアとしました。(駐車枠に入れるためには、ターゲットポイントに直線では近づけないという意味です)

ターゲットポイントと角度の関係

<出典画像:『ターゲットポイントと角度の関係』>

これは、車は最小回転半径より小さく回ることが出来ないからです。大きな角度で近づければ、ターゲットポイントの近くのエリアで最小回転半径の軌道に乗れますが、小さな角度になるにつれて、ターゲットポイントから離れたエリアから、最小回転半径の軌道に乗る必要があります。

また、角度が大きい程、駐車枠の前の位置で、少ない回転で車体を真っ直ぐにすることが出来ます。角度が小さい程、駐車枠の奥の位置で、回転も多くしないと車体を真っ直ぐにすることが出来ません。

角度が最も小さい0度、つまり直角バックが難しい理由がここにあります。ターゲットから最も遠く離れたポイントで、最小回転半径の軌道に乗せなければならないからです。また、直角バックの場合、ただ水平方向(X軸方向)にターゲットポイントから離れるだけでなく、垂直方向(Y軸方向)でも離れなければ、車体が真っすぐになる位置が、駐車枠の奥になるので、その分垂直方向を離さなければ、隣の車にぶつかってしまいます。

車体が真っ直ぐになったかどうかの判断

車体が真っすぐになったかどうかを、サイドミラーで駐車枠の線と平行になっているか、隣の車と平行になっているか、で判断するのは結果の判断です。バック駐車をもう一度やり直すかどうかを決める判断です。

やり直さなくて済むように、一発で真っ直ぐにするためには違う判断が必要です。

運転席から見ると、フロントガラスとダッシュボードの境目は一種の水平線(地平線)です。またボンネットのラインも、同じように意味づけることが出来ます。

これらの水平ラインと、前方の景色を比較することで、自分の車の車体がどちらを向いているかを判断することが出来ます。

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<出典画像:『フロントの水平ラインと前方の景色を比べて判断する』>

もう一つは感覚的な判断です。ハンドルは車が少しでも動いている状態では、タイヤが真っ直ぐになった位置で最も軽くなります。

フロントの水平ラインの視覚的判断と、ハンドルの軽さの触覚的判断を合わせれば、後輪を軸に回転している時にコントロールできるのです。

結果の判断でなく、回転している時の判断で車の傾きを判断します。

ピボットエリアの攻略(まとめ)

これまでターゲットエリアとしてきましたが、それに近い捉え方でピボットエリアと呼ばれている考え方があります。バスケットボールで片足を軸に旋回するルールの名称ピボットと同じ意味です。ピボットエリアの半径は、角度によって変化します。

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<出典画像:『ピボットエリアとは』>

それでは、ピボットエリアのどこをピンポイントに照準を合わせるのがベストでしょうか?ピボットエリアの範囲を点に絞って照準を合わせれば、より正確に駐車枠に入ることが出来ます。ピボットエリアの中心点=駐車枠の縦横のラインが交わる点の延長線とピボットエリアの円周が交わる点です。

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<出典画像:『ピボットエリアの中のベストポイント』>

その理由は、車は直線からいきなり角度をつけて直線的には曲がれないからです。円の軌道でしか曲がれません。このポイントに後輪が来た時に(来たと判断できる時に)回転を始めれば、先ほどのターゲットポイントを通過できます。

角度とピボットエリアの大きさは反比例

車を傾ける角度が大きい程ピボットエリアは小さくて済み、角度が小さくなる程ピボットエリアは大きく想定しなければなりません。

ただエリアが大きくなるだけでなく、回転を始めなければならないポイントも、角度が小さくなる程手前にしなければなりません。角度0度の直角バックが、最大のピボットエリアになり、最も手前から回転し始めなければならないポイントになります。

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<出典画像:『角度によるピボットエリアの大きさと回転ポイントの違い』>

当然、ピボットエリアが小さい程、そこに向かって直線で近づけ、また回転する量も小さくて済みます。可能な限り大きな角度で車を傾けることがバック駐車の第一の秘訣です。

ピボットエリアへ真っ直ぐ接近した後に回転する

ピボットエリアに近づけることと、回転して車体を真っ直ぐにすることを分業します。回転しながら近づけないで、直線的に近づけてから、回転を始めます。近づけることと回転することを分業にするのが、バック駐車の第二の秘訣です。

駐車枠の中で下がりながら直そうとしない

下がりながら、サイドミラーで白線や隣の車との空間などを見ながら、ハンドルを左右に回して調節することは可能です。

しかし、サイドミラーを見ながらの調節をするには駐車枠の奥行の距離が短く、左右に車体を曲げることで、かえって中途半端な角度で収まる可能性が高いのです。

このような調整方法をとるよりも、ピボットエリアに大きな角度で直線的に近づけ、回転で車体を真っ直ぐに戻す判断は、フロントの視覚的な水平感覚と、ハンドルの軽くなる手の感触に任せた方が、確実に真っ直ぐに駐車出来ます。

万が一曲がってしまったり、駐車枠の片側に偏ってしまった場合には、一旦前進して、ピボットエリアに近づけ、そこで回転してと、やり直す方が綺麗な駐車が出来ます。

駐車枠に入った後は、下がりながらハンドルで真っ直ぐにしようとしないことが、バック駐車の第三の秘訣です。