教習所で習った運転の基礎と、現実の道路での応用には大きな差があります。教習所で教えられた交通マナーやルールに沿っていない部分が、現実の運転の中には確実にあります。教官の前で行ったら、減点の対象になるであろうギリギリのところで毎日運転しています。

道路の流れに乗れるようになるのは、いずれは時間が解決してくれます。教習所で習った安全運転の基本を大事にしながら、ベテランドライバーの悪いマナーにも屈せずに、流れを切らない運転に慣れて行けばよいのです。

しかし免許取り立ての時期は、戦闘訓練学校から実弾の飛び交う戦場に出たようなものです。「敵の攻め方は教えられたのとは違う」と文句を言っても、八方から予想もしないやり方で飛んで来る弾に対応しなければなりません。自分だけ正しいと思っていても撃たれたら終わりです。

教習所の理想の安全運転から、現実の運転に少しづつ近づけていくのは、理想を捨てるのではなくて、理想の上に積み上げるような意識が良いと思います。基礎と理想は決して無駄なものではありません。我先に行こうとする自分勝手な現実に、ちょっとだけ合わせれば良いのです。

私も時々教習所で習ったことを時々思い出しています。交差点を通過する時は「信号青よし、右よし、左よし」、左折する時は「合図よし、左よし、巻き込みよし」、追い越しする時は「合図よし、ミラーよし」などと、心の中で口ずさんでいます。教習所で教えられた声出し確認は、私の運転の基礎になっています。一方で、「送りハンドル」は駄目だと教えられましたが、右左折する時、ゆっくり曲がる時には送りハンドルにしています。早く回り過ぎるクロスハンドルより安全と分かったからです。

免許取り立ての主婦が、教習所と現実の差に最も戸惑うことが多いと思います。その中で、今回は「法定速度で走っていては遅いのか?」と言う点に注目してみました。慣れれば良いことなのですが、初心者にとっては切実な目の前の悩みです。どうしてそうなるのか。教習所で教わったことと現実の差を悩まないで、納得して受け入れられるための対策です。

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法定速度では遅いの?
法定速度を守って走っていたら、後ろからパッシングされて追い越されたことはありませんか?免許取り立てだからと馬鹿にされたような、邪魔者扱いされたような不快な気分にさせられます。一方で、「自分の運転は下手なのか?迷惑をかけているのか?」と自信を失いかけます。

教習所では法定速度を超えて走らないように指導されます。現実の道路では法定速度では遅く感じられ、車の流れを詰まらせてしまうように思えます。

この差の原因はどこからくるのでしょうか?

実勢速度と規制速度のせめぎ合い
運転者は道路の幅や曲がり具合、車線の数、交通量など、道路環境や交通状況に合わせて、自分が最適だと思う速度で走ろうとします。法律で規制されていることとは別に、本能的に自分で状況を判断して速度を決定しようとします。

このような、ある意味自然の流れで決定される実際の速度を実勢速度と呼びます。実勢速度と言っても、物凄く速く走る車もあれば、物凄く遅く走る車もあります。実勢速度の目安として使われるのが、最も速く走る車の上位15%より下、下位から85%のグループの中での最高速度が使われます。これを「85パーセンタイル速度」と言って、実勢速度として扱っています。

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つまり、現実の車の流れの85%の人がその速度以下で自主的に走っている速度になります。「85パーセンタイル速度」であれば、85%の人が満足して走れる速度になります。

しかし法定速度は実勢速度(85パーセンタイル速度)になっていません。それよりもおよそ10km/hから15km/h遅い設定(基準速度)になっています。

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<出典画像:「速度規制の目的と現状」警察庁交通局

現実の車の多くは実勢速度=85パーセンタイル速度で走っています。その流れの中に、免許取り立ての法定速度を順守した車がいたら、流れ滞らせるような存在になってしまいます。

ベテランドライバーにとっても、10㎞/hから15km/hの実勢速度と法定速度の差が、建前の法律順守と実際の走行速度の矛盾になっています。速度規制の取り締まりがこの差の中で、取り締まり担当者の任意の範囲で行われる場合があるからです。15km/hオーバーで捕まらない場合もあれば、5㎞/hで捕まる時もあり得るのです。

「自分は捕まったのに他の車は捕まらなかった」「法定速度では遅くて走っていられない」実勢速度と法定速度の差の矛盾の中で、「見つからない限り法定速度を違反しても実勢速度で走る」選択をせざるを得ません。

法定速度でなく実勢速度で取り締まってくれれば、違反したとしてもドライバーも納得しやすくなります。「85%の人が満足している速度を超えてしまったのなら自分が悪い」というわけです。
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しかし、実勢速度(85パーセンタイル速度)と法定速度の間は、建前上は違反ですが実際にはグレーゾーンになっています。取り締まり担当者の任意な判断に任されています。1㎞/hでもオーバーしたら即アウトという訳でもなく、15㎞/hまでなら容認されている訳でもありません。私も、法定速度で走るパトカーを追い越して、何事もなく過ぎ去って行った車を何度も見た事があります。(片側2車線の道路ですが)

なぜ実勢速度では駄目なのか?
警察が速度を規制する判断の元になる要因は3つあります。
  1. 市街地の事故の危険性があるかどうか。
  2. 中央分離帯があるかどうか。
  3. 歩行者を保護することが出来るかどうか。
これらの3つの要因は、日本特有の事故の発生原因になっているという主張です。
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<出典画像:「速度規制の目的と現状」警察庁交通局

他の先進国と比べて、車と住環境の近さ、車と歩行者の近さ、対向車と分離されていない道路環境の不整備が根拠となって、実勢速度のまま野放しに出来ない理由になっています。

今後の速度の規制は、生活道路(住居地など)での事故を防止するために低速化させ、一方、幹線道路の整備による高速化の2つの方向に向かうことが予想されます。

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<出典画像:「速度規制の目的と現状」警察庁交通局

法定速度があるから実勢速度もある程度の範囲で収まっているという考え方もできます。

警察の主張は理解できたけどどう対応する?
うっかりスピード違反で捕まってしまった時は、素直に納得できない時もありますが、私たちの安全のための速度規制です。事故にならずに罰金で済むことに感謝すべきなのかも知れません。

確かにある程度交通量があって、車の流れも比較的早い広い道路では、法定速度で走っていては、後続車をイライラさせたり、無理な追い越しをさせて、返って危険を高めてしまうことにもなります。

しかし、住宅地や狭い生活道路では、法定速度以下で走ることが重要に感じられます。私も運転歴を重ねる程、30㎞/h規制されたような道を走る度に、危険を予測しながら走る様になりました。

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<出典画像:「速度規制の目的と現状」警察庁交通局

歩行者に30㎞/hで衝突した場合と50㎞/hの致死率の差を知れば、納得されると思います。「あの路地から子供が急に飛び出して来たら?」という警戒心が強くなってきます。

だから、こう思うのです。歩行者が不意に飛び出さないような大きな道路では、実勢速度(法定読度の10㎞/hから15km/h程度のオーバーを限度に)の流れに乗って走り、いつ急ブレーキを掛けるか分からないような生活道路では、法定速度をしっかり守る。こんな感じの対応で良いのではないでしょうか?

40㎞/h以上の道路では車の流れに沿って走り、30km/h以下の道路ではより慎重に法定速度を守る。

実勢速度(85パーセンタイル速度)という現実も警察は理解しています。特に危険が予測されないような道路では、この実勢速度を警察も実際には尊重しているのではないかと思います。車のスピードメーターの精度にバラツキがあるからとかいう問題ではなくて、そういう認識があるから、多くのドライバーの経験則のように、実勢速度以内なら取り締まりを受けないことが多いのではないでしょうか。