集合住宅や商業施設の駐車場では、隣接する住民や植木、花への排気ガスを避けるために、「前向き駐車でお願いします」の看板を掲げています。

しかし、看板の効果はそれほどあるとは思えません。なぜなら、排気ガスで悩む住民の声が絶えないからです。集合住宅の管理会社や商業店舗の責任者に交渉しても、防げるような障壁を設けてくれるケースはまれで、多くは看板や張り紙の注意喚起を徹底するように努力する程度です。

前向き駐車による排気ガスの迷惑軽減の効果は大きいので、ルールが利用者に伝わって守ってもらえさえすれば、莫大な費用を掛けずにトラブルが解消に向かいます。こじれて訴訟などに長期化することも少なくなるでしょう。

看板よりも効果のある方法を考えてみました。

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看板は効果的でない理由
前向き駐車の看板アップ
<出典画像:http://img09.shop-pro.jp/PA01042/020/product/18854647.png>

このような看板が、駐車スペースの奥の壁などに貼ってあるのをよく見かけます。ひとつ一つの駐車スペースにあるのは稀で、中にはポツンと1枚だけ貼ってある場所もあります。
前向き駐車看板遠景
<出典画像:https://item-shopping.c.yimg.jp/i/l/e-netsign_to-8a_3>

運転する人の心理として、駐車場では駐車スペースを探して見つけることが最優先されます。駐車場全体の環境よりも、空きスペースがどこにあるのかに意識が集中します。

「なるほど、ここの駐車場は前向き駐車のルールになっているのか」などと思いながら駐車スペースを探すことは少ないのです。他の人よりも先に空きスペースを探すことで頭は一杯です。

ですから、「あっ、あそこが空いてる!」と見つけたら、直ぐに近づいて、他の車よりも先に駐車するための行動を始めようとします。駐車=バック駐車の習性の人には、空きスペース発見即、バック駐車の準備行動になります。ルームミラーに写る前向き駐車の看板に気がつくのは、バック駐車が完了した後です。もはや、駐車をやり直す段階ではありません。「ま、いいか」で自分を納得させて終わりです。

駐車スペースを見つけた時、その奥の壁に貼ってある看板まで注意して見ていません。何度も利用する駐車場なら分かりますが、偶然利用する場合などは認識しません。

そして、前向き駐車を守ることと車を入れ直すことを天秤にかけた場合、前向き駐車を守ることを選ぶほどの重要性を感じていません。
  • 少しの間だけの駐車だから大丈夫。
  • 長くアイドリングしているわけじゃないから大丈夫。
  • 罰則があるわけじゃないから大丈夫。
  • 他の車もバックで駐車してるから大丈夫。
  • 前向きに入れ直すほどの事でもないから大丈夫。
前向き駐車を看板で警告して守らせるのは、良識ある常連の利用者には伝わりますが、それ以外の利用者には効果的ではありません。

運転者へ伝えるタイミングが遅いのです。駐車スペースを見つけた瞬間に伝えなければ間に合いません。バック駐車の体勢に入ってしまっては手遅れなのです。まだ社会の中の共通認識では、前向き駐車のために車を入れ直すほどの価値観を持つに至っていないからです。

バック駐車の体勢に入る前に伝える

運転中の視界の多くは、前方の道路上に集中します。空間の情報よりも路面からの情報の方が強く伝わってきます。例えば、空間に設置された横断歩道有りの道路標識看板よりも、路面に描かれたゼブラ模様の方が直感的に伝わってきます。

道路標識横断歩道

<出典画像:http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/6d/970fcd48d3a2487899fe045f5d26e61b.jpg?random=b7ba6834ed5146c807a45d4d5a9778eb>

そして、もし歩行者がいた場合、一旦停車するのは路面に描かれた模様や線の前で行います。この模様や線がない場合を想像すると、車が停車する位置の一定さは異なると考えられます。模様や線があるために運転する人をその位置まで誘導します。道路標識の看板だけでは正確に誘導できません。

路面から伝わる情報は、早く強く伝えることと誘導することができます。

前向き駐車の場合でも、看板よりも路面に描いた文字やシンボルで伝える方が、早く強く、そして誘導できるのではないかと考えられます。

駐車場ペイント来客用
<出典画像:http://www.pladan-kako.com/made/up_img/1406598310-027066_4.jpg>

駐車スペースの前の方に「来客用」とあれば、来客でない車が駐車スペースを見つけた時点で、ここは止めてはいけない場所だと判断できます。バック駐車の体勢に入る前に誘導できます。駐車スペースの前に大きく描かれた車いすのマークを見たら、常識のある人なら駐車しません。路面からの情報によって、バック駐車の体勢に入る前に伝わり、他の場所へ誘導させられます。

駐車場ペイント障碍者用
<出典画像:http://www.y-d-k.co.jp/p3-works/2-tosou/images/149/p6-2.jpg。>

駐車スペースの前部に描かれたシンボルや文字に伝達効果があるにも関わらず、「前向き駐車」とペイントされた駐車場を見かけることがほとんどありません。

例えばこんなシンボルが駐車スペースの前部に描かれていたら、バック駐車の体勢に入る前に伝えて、前向き駐車に誘導することが出来るのではないでしょうか?

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イマイチですね。デザインや文字は工夫が必要ですが、方法としては、少なくともこれまでの奥の壁に貼られた看板よりは効果的なはずです。同じデザインなら看板よりも路面にペイントした方が効果は上です。例えばこんなシンプルな看板のデザインがあります。


前向き駐車看板dezainn

<出典画像:https://tse2.mm.bing.net/th?id=OIP.Lh4NSDa91jjlCfHE07uJ3gEsDI&pid=Api>

駐車スペースの奥の壁に貼るのでなく、そのデザインで前の方の路面にペイントすべきです。そして、出来れば、駐車場の通路の入り口近くにも「前向き駐車」を知らせる路面ペイントを施しておくことです。


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バック駐車の体勢に入る前に、いかに早く伝えることができるかがポイントになります。