• 「ノロノロ走るな、前の車をさっさと追い越せ!」
  • 「こんな狭い道でそんなにスピードを出すな!」
  • 「どうしてこんな遠回りの道を選ぶんだ!」

自分は運転が上手いと自負している夫にありがちなのですが、普段は穏やかな夫でも、助手席に座った途端、妻の運転に文句を付けたがります。

運転に限りませんが、他人に文句をつけるのは、自分の方が他人より優れているという心理の表れです。

運転する妻に文句を言うのは、普段の生活の中で、妻に抱いている不満が溜まっている可能性があります。

家庭の中では優位に立てないので、妻が運転する時に生じる優位性を無意識に感じ取って、ここぞとばかりに不満のエネルギーを発散させようとするのです。

プライドの高いであろう夫の自尊心に、真っ向から反発するから喧嘩になってしまうのです。楽しいドライブが最悪の雰囲気にならないようにする方法がないか考えてみました。

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夫の優越感に逆らわない

男尊女卑を奨励するわけではありません。目的は、楽しいドライブを不快な時間にしないため、喧嘩になるのを回避することです。運転中の空間の中に限った対処の仕方です。

仕事や日常生活の中で押さえつけられたり、傷つけられたりしていると思われる夫にとって、数少ない欲求不満の発散の場が、妻が運転する車の助手席です。

この場は夫にとって、傷ついた自尊心を回復する時間と空間です。それを、夫の勝手な言い分と非難するのは簡単ですが、何も解決しません。

例え理不尽な関係であったとしても、夫の心の健康を癒すためと考えれば、許せることではないでしょうか?

夫婦どドライブする車の中の空間は、裁判所の法定ではないのです。どちらが正しいとか、どちらに真理があるかを決着する場ではありません。家庭の平安と夫婦の幸福を保つ場です。

運転に文句を言う夫を見て、「ああ、この瞬間に夫の傷ついたプライドが癒されているのだ」と思って、素直に従っているのがお互いのためなのです。

法廷で厳しく追求してくる検察官に、反論しようとする弁護士のようになってはなりません。車の中は成否を論ずる場ではなく、平安を求める場なのです。

夫の自尊心が治癒されることを願って、文句を有難く拝聴しましょう。

運転中は教官と生徒に徹する

当然妻にも自尊心があります。運転に関しても、自分なりの自負心はあります。譲れない一線というものもあるでしょう。あるいは、自分の方が夫より運転は上手いと思っているかも知れません。

「うるさいわね、そんなこと分かっているわ!」

「自分だって下手な癖に、言うだけなら誰でも出来るわよ!」

などと反発する気持ちはもっともです。とても理解できます。しかし、反発は良い結果を招きません。ここは、運転する妻の方が折れて、家庭の幸福のために自己犠牲の精神を発揮しましょう。

表面上は夫に華を持たせるのです。西遊記のお釈迦様のように、夫を掌の上で操ります。夫に勝を譲って、平安を得るのです。小さなどうでも良い優越感を差し出して、大きな価値のある幸福を手に入れます。

そのためには、自動車教室のように、助手席の夫を指導教官、運転する自分を生徒と見立てます。中には腹の立つ意地の悪い教官もいますが、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」と、あるいは「大したことはない、大したことはない・・・」と心の中で唱えながら、頭の上をやり過ごします。

どんなに腹の立つ文句や要求であっても、「はい」「分かった」と答え、心の中では、自分の怒りを鎮めるのです。

心の中で、「クソ教官様、私の掌で気の済むまでわめいていなさい」と呟きましょう。

反論は車から降りた後にする

夫の文句に対して、当然、疑問や反論も出てくるでしょう。そういう場合は、運転中に反論してはいけません。

どんなに正当な反論であっても、むしろ正当な反論である程、夫の自尊心を損ない、気分を害することになります。

運転中は一瞬の判断や操作が影響します。そういう緊張した空間の中では、冷静に反論を受け入れる余裕がありません。普段は穏やかな人でも、運転すると人が変わったように乱暴な振る舞いをする人がいます。それは、大げさに言えば命に係わる運転の緊張状態から生じます。

助手席の夫も、運転する妻も、緊張状態の中にいます。ちょっとした不用意な言葉使いが、相手の機嫌を損ねる原因になりかねません。

反論や疑問が生じたら、車を降りた後、食事などの落ち着いた場で、冷静に、穏やかに問いかけるのが良いでしょう。

そこでも、喧嘩になりそうになる場合には、妻の方が大人になって、子供の夫を憐れんで、負けた振りをして夫を癒してあげることで家庭の平安を守ります。

最も大切なことは、妻のプライドより、家庭の幸福なのですから。夫の小さなプライドなど、家庭の平安に比べたら取るに足らないことです。

指摘されたことを冷静に反省してみる

これは妻自信が一人で行うべきことです。夫の文句の中にも、冷静になって振り返って見れば、もっともなこともあるはずです。

  • 左折の巻き込みを確認していない。
  • 一時停止が中途半端だ。
  • カーブミラーをよく見ていない。

自分の運転の中に隠れているもので、普段は自分では気がつかない小さなことを、夫の目には危険な運転に映っている場合があります。

夫に腹を立てる気持ちが、そういう貴重な指摘を軽視することのないようにしたいものです。

助手席の夫の態度は、そうそう変わるものではありません。歳をとる程、口うるさくなる可能性もあります。

普段の夫と、車の助手席の夫とを、頭の中で割り切って区別することです。夫の不満を一方的に受けるサンドバッグになるつもりで、あるいは怪我をした患者を介護する看護師になったつもりで、弱くてもろい夫を癒してあげましょう。

良い悪いではなく、家庭の平和、幸福のためです。

運転すること以外の生活の場で、妻のプライドを回復する場面は、いくらでもあるのですから。